《MUMEI》
一際悪化
部活動中、七生と一言も口を聞いてやらない。



もう俺が知っている七生ではないからだ。あれは好きな人が出来たと言いながらどうすれば両思いになれるだろうとか悩んでいたときの姿だ。

俺が遠巻きに眺めていた七生だ。他人にそうやって接していた。俺はいつも相談を受けていたんだ。
俺は所詮、都合のいい他人だった。十数年も一人で友情ごっこしていただけ……。


「すいませーん、そっちにカメラあるって聞いたんですけど」
南が部室に訪ねてきた。そういえば先生は新聞部の副顧問もしていて、最近カメラ持ちながらバチバチ撮り歩いてたっけ。


「今日返すつもりだったんだよ、今渡しておく。」
顧問がいそいそと棚を漁り出した。


「はい。」
南がデジカメを受け取る。


「南って写真部なんだ。」
文化系のイメージだったから、カメラを持つ様はしっくりくる。


「部活動中だ!部外者はさっさと出ていけ!」
七生が南に向かって虫を落とすように手を払った。……うっざ。


「……うっざ。」
まさに今考えていた言葉を代弁してくれた!南の容赦の無さに尊敬さえする!

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