《MUMEI》
「あら〜。あんなに硬派だった貢がねえ、東京行ってだいぶ変わったみたいやないの」
「こ、硬派?」
聖ちゃんは顔を赤らめながらも不信そうに俺を見上げた。
「な、なんの用や…」
「いや、貢のアルバム聖ちゃん見たいかと思って持ってきたんや」
と言うなりオカンは聖ちゃんにでっかい紙袋を渡した。
「うわ〜っ!見たかったんですっ!」
「なっ!オカンッ!なにすんねんっ!」
俺は聖ちゃんから慌てて紙袋を奪い取る。
「ええ?貢?」
「ダメ!あかん!絶対あかんねん!」
「貢…」
聖ちゃんはこれ受け取った瞬間めっちゃ嬉しそうに笑ったのに、俺のせいで捨てられた仔犬みたいに寂しそうに俯いた。
でも、でも、これは絶対に見せる訳にはいかないんだ。
聖ちゃんごめん、ごめん。
俺はごめんという気持ちを精一杯込めて聖ちゃんを見つめ…
ボカッッッ!!
「アッ!ィイタッッ!!」
オカンに臑をおもいっくそ蹴られ、しゃがみ込んだ瞬間
「アッ!」
オカンに紙袋を奪われ
「聖ちゃん!阿呆はほっといてあっちで見ようや」
「なっ!」
ボガッッ!!
「ヴアああッ!」
とどめとばかりに鳩尾を蹴られ、呼吸もままならない俺の視界には…
オカンに手を引かれながら部屋を出るところの、そして俺を心配そうに見つめる聖ちゃんがあった…。
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