《MUMEI》

booooon………



車内。


先頭を走るクロの車の助手席には美紀が乗っていた。



「…一応気ぃ遣ってくれてんのかな?」



「…何が?」



「ヤマトくんたち。


たまには運転したいから車貸して〜なんて言ってたけど、


そんなの小太郎に頼めばいいことだし。


やっぱ気ぃ遣ってくれたんじゃない?」



後ろを走る美紀の車はヤマトが運転していた。


助手席には恭介。


後部座席には理紗である。



「ホントに気ぃ遣うつもりならもうちょい上手く嘘ついて欲しかったな。」



「あはは。ヤマトくんあんまり嘘得意な方じゃないもんね。」



「…あんまりわかりやすく気ぃ遣われて2人きりにされると逆に会話がしずらいんですがね。」



「…全くですね。」



「…」



「…」



2人の間に妙な沈黙が流れた。



「…でも小太郎が今口数少ないのは別の理由もありそうですね。」



「…何故でしょう?」



「考え事が多いからです。」



「う〜ん…」



赤信号に車は停止する。



「時々変なタイミングで美紀は鋭いよね。」



「えぇ。」



「意識しちゃって口数が少なくなっちゃった感じのちょっとかわいい彼氏で押し切れると思ったんだけど。」



「無理だよ。
表情がいつもより固いもん。」



「…素晴らしい洞察力ですね。」



「えぇ。」



「…彼女と2人きり。にも関わらず別のこと考えてる僕は彼氏として今一つでしょうか?」



「…時と場合によります。」



「んじゃ、今は?」



信号が変わり車は走りだす。



「今はしょうがないと思う。」



「…わり。」



「ん〜ん。」



「…明日終わったらさ、」



「はい。」



「1番に抱きしめたいのでコートまですっ飛んできてください。」



「…負けたら恥ずかしいんですけど。」



「…それ考えてなかったわ。」



「…ぷ。」



「くはははははッ!!」



「あ〜もうバカだなぁ。
どんだけ自信満々なんだよッ!!」



「くはははッ!!ははッ…やべッ…ツボったッ!!」



「自分で言ったことじゃんッ!!」



「ははは…あ〜、笑った。……ぷッ。」



「どんだけツボってんだよッ!!」



「あ〜わり。いやもう大丈夫。」



「もう…」



笑いながらため息をつく美紀。



「んじゃ、勝ってね。」



「え?」



「1番に抱きしめられに行くので勝ってください。」



「………了解です。」

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