《MUMEI》

女の目の前に広がる光景は、我が家ではなかった。

両脇は板塀がずっと奥まで続き、女の正面奥には、安普請な建物がある。

今時珍しいトタン屋根のベニヤ板の壁、そして屋根の上に設置された、色とりどりの豆電球で飾られた看板。

「なんか、安物のラブホみたいね」

女は冷静さを取り戻し、マジマジと観察を始めた。

看板には、おそらく蛍光塗料か何かで書かれたであろう文字が、すっかり暮れてしまった周りから浮き出る様に光を放っている。

「不思議相談賜り処?」
(ふしぎそうだんたまわりどころ)

声に出して読んだ文字に女は首を傾げた。

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