《MUMEI》
見当たらない写真
「お祓いって‥やっぱ神社とか?」
「そうじゃね?」
何処に行くのか告げず、一人先頭に立って歩く井上の後ろで、皆は口々に疑問をぶつけ合っている。
「ちょっと大袈裟なんじゃ‥」
「でも、心霊写真はちゃんと供養してもらった方がいいって聞くし…。」
「大橋君、さっきの写真持って来たよね?」
まるで皆のお喋りを止めるかの様なタイミングで、井上が少しわざとらしい大きいめの声で、司に話し掛けてきた。
「え?あ〜、うん。確か鞄に入れたはず‥」
「そ?もうすぐ着くから準備しといて。」
井上は振り返る事なく、前を向いたまま歩きながら喋る。
その為、司も止まる事は出来ず、歩きながら鞄の中を漁っていた。
しかし一向に例の写真が見当たらない。
「おい、どうした?」
ずっと鞄をガサゴソしていた司を、不審に思った洋平が聞く。
「いや、ちょっと写真が…」
「ないのか?」
「うん…あれぇ、おかしいなぁ?ここに入れた筈なのに…」
確かに入れた筈だった。
なのに一向に見つかる気配がない。
「家戻るか?」
「悪い…」
結局、司と洋平はまた家に戻る羽目になり、後の四人は先に神社に行ってもらう事になった。
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