《MUMEI》
不意打ち
 次のビルへと跳び移ると、ユウゴはそのビル内へと続くドアを蹴破り、階段を降り始めた。
走りながら後ろを振り向くが、さっきの男たちは見えない。

三人はそのまま一階まで駆け降りると、ロックされたドアを開けて通りに出る。
幸いにも、通りには誰もいない。
おそらく全員、ビルに入っているのだろう。

 ユウゴは二人を振り向き、人差し指を口にあてると無言で歩き始めた。

 数十メートル行ったところで、ユウゴは歩みをピタリと止めた。
ユキナとサトシもそれに倣う。
三人の視線は同じ場所へ向いている。

 向こうのビルの入口に、男が一人立っていたのだ。

その手に持っている機械から、さっきの男たちの仲間だろうと推測する。
まだ、こちらには気付いていない様子で彼はビルを見上げていた。

 ユウゴは二人にここで待つように指示し、一人気配を殺して近づいていく。
気付かれないように、大きく回り込んで、腰を落としながら進む。

やがて、男のすぐ近くまで来た時、右手に持った銃を素早く男の後頭部に突き付けた。
「動くな」
できるだけ抑揚を無くし、低い声で言う。
頭に突き付けられたそれが、銃であると悟った男はビクっと肩を震わせた。
「両手を上げろ」
男は「殺さないでくれ」と震えた声で言いながら、両手を上げた。
さっきから気になっていた機械は、近くで見ると簡単な地図が表示されていた。

 ユウゴはそれを取り上げると、男の首の後ろを銃で思いきり殴り付ける。
すると男は「ぐあっ」と唸ったかと思うと、呆気なく倒れて気を失った。

「おい、サトシ。ちょっと手伝ってくれ」
 離れた場所で様子を見守っていたサトシとユキナは、辺りを気にしながら近づいてくる。

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