《MUMEI》 居座ってから6日が経ったある日のことである。人間Aが、あの忌々しい外界に連れていくなどと私に語りかけたのだ。嫌だとも言えず、私は拗ねることもできずにいた。 私が何故外界を嫌うのか。それは、私が以前捨てられていたからだ。車なるものは、雨粒を飛び散らかし、人間なるものは、知らぬフリをした。実に心の腐った生き物たちである。私はその外界を一年となく過ごした。所謂仲間なるものたちに(ここで話す仲間は野良の犬ではなく、野良の人間である)パンの切れ端を貰ったり、人間が食べ残した米粒などを食し、命を繋いでいた。 そんな優越に満ちた表情をした所謂エリート人間たちの歩く外界を、私は絶対として忌み嫌ったのである。 刻一刻と時間だけが、私をあの忌々しい外界へと怪しいオーラを放って手のひらをめいいっぱい広げ、私を待っていると思うと、やはり保健所にあのままいて、ガス室に送り込まれていた方が良かったのではないか、と思考を巡らせるのである。 「ぶん太行くわよ」 嗚呼、なんと不幸なことだろう。私はまた、あの汚い雨粒を顔にかけられて、それを間違って飲み込んでしまい、それをエリート人間たちに冷ややかな目で見られるんだ。 しかしそれは、いとも簡単に私を裏切ったのである。 「今日は小雨だけど降ってるから、カッパ着させてあげるわね」 え?カッパ? 私は戸惑いながらもそれを着た。 ふん、なかなかの着心地である。私は鼻をツンと高くして、人間Aと共に外界へ一歩踏み出した。 「あ、久しぶり」 そいつは爽やかそうな顔をした好青年であった。 前へ |次へ |
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