《MUMEI》 誘い「先輩、バイトしません?」 その日のバイトが終わって、家でダラダラとゲームをしているところに、昔の後輩から電話がかかってきた。 「いきなりなんだよ」 「いや、先輩女の扱い馴れてるじゃないですか」 「あぁ……」 適当に返事しながら、ゲームの中の敵と戦う。 「自分で認めないでくださたいよ」 後輩に笑われて、ハッとした。 「あ、え?」 「……話聞いてました?」 「ははっ、悪ぃ、今戦闘態勢入ってるから」 「女ですか?」 「ちげぇよ」 「まぁまぁ、とりあえずバイトしません?」 「バイトってなんのだよ…俺そんな働きたくないんだけど」 「ボーイなんスけど」 「ボーイ!?」 「先輩、得意分野ですよね?」 「いやいや…」 昔、俺はホストをやってた。 特に理由はないけど、なんとなく…。 ホストか…経験してみるかな…、なんてノリで、やってみた。 そしたら運が良かったのか、あっという間にナンバー入りして、気付けばナンバーワンってやつになってた。 その時に稼いだ金と、女への嫌悪感が今も残っている。 それと、可愛がってた後輩の蓮(レン)。 「先輩の女の管理に対する能力はマジ素質ですから」 確かにホストという仕事は、管理が基本だった。 自分の客が、なんの仕事をしているか、稼ぎがどのくらいあるのか、なんていう財布の管理から、その女の将来性まで。 他にも管理しなきゃいけないことが、山程あった。 けど俺は『女』という生物に、嫌気が差して夜の仕事を辞めた。 「いやいや、俺はもう夜上がったから」 辞めるときだって、苦労した。 確かに今の生活に、刺激は無い。 だけど俺は、暫くはダラダラと過ごしたかった。 「…実は……相談があって…」 急に蓮が、真面目な声で言った。 前へ |次へ |
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