《MUMEI》
蓮の相談
「相談?」

「笑わないでくださいよ…あと誰にも言わないでください」

「誰にもって、俺はおまえと違っておまえ以外の店の連中と付き合ってないから」

蓮は俺が辞めた後、「先輩がいなきゃ目指す場所ないです」なんて言って、すぐに店を辞めた。
童顔の蓮は、年上のオバサン連中に、気に入られてたが要領が悪く、大した売上もなかった。
けど男にも可愛いがられる質らしく、辞めるときに店のスタッフたちに「諦めんな」と、引き止められたらしい蓮は、未だに何人かのスタッフと連絡を取り合っている。

「ならいいんですけど…」

「で?相談ってどうしたんだよ」

スタッフたちに引き止められても、「もともとこういうの苦手なんスよ」なんて言っていた蓮が、また夜の仕事をしたがる理由が、気になった。

「……恋しました…かなり本気のやつ」

「はぁ!?」

俺はゲームをしていた手を止めた。

「おまえ…キャバ嬢かよ…」

「よくわかりましたね」

そう言って「へへっ」と笑う蓮に、呆れた。
夜の仕事は向いてない、なんて言ってた奴が、ボーイやりたいなんて言ったら、恋の相手がキャバ嬢だってことくらい、すぐに察しがつく。

「通ってんの?」

「いや…まだセーフです、通ってないです」

「じゃあ、なに?」

「いや…ホームページとブログ見ただけなんスけど…」

「は?いや、待ておまえ…ちょっとついて行けねぇわ」

「だから笑わないでくださいって言ったじゃないですか…」

蓮は何気なく見たキャバクラのホームページで見掛けた女に、一目惚れしたらしい。
いつもはそんなもの見ないのに、見ようと思ったことが運命でとかなんとか…。
俺には到底、理解できない思考で相談してきた。
そして通い出すのが時間の問題だから、その女が働いている店にボーイとして働きに行きたいとか…。

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