《MUMEI》
▽
「マジで?伊藤さんが?」
「うん、もうびっくりしちゃって!まさかあの裕斗にベタ惚れの伊藤さんが抱き合ってるなんてさー」
「あの裕斗バカな伊藤さんが…、信じられんねーな」
「うん、信じら…、ッん…、ぁっ…、ふぅ…、いきなり、アッ!アッ!」
「な?もう俺に集中しような?」
「うん、ごめん、…ンッ……」
密部に指を納められたまま深く唇を塞がれて。
全身から沸き上がる熱を全身で受け止めて欲しくて俺は隆志にきつくしがみついた。
セックスは快楽だけじゃない。
愛してる人に愛されてるって一番実感できる手段なんだ。
なんの味もしない俺の肌を、愛しげに唇で辿る隆志。
欲情に彩られながらも、泣きたくなる位切なげに俺を見つめ、何度も角度を変えながら深いキスを落としてくる。
いつも体を繋げる前に、たくさん全身を撫でてくれて、いっぱい愛してるって言ってくれて、とにかくいっぱい安心させてくれる。
俺、隆志とのセックス…スゲー好き。
色んな意味で気持ち良くて、色んな意味で満たされて。
俺は、キスの角度を変えるために少しだけ離れた隆志の頬に手を柔らかく添えた。
無言で見つめ合う。
そして隆志はその手に自分の手を重ねてきた。
「隆志、愛してる」
俺は自然に笑って、瞼を閉じて
「ほら!早くキス」
「あ、は、はい…」
慌てるように重なってくる唇。
それは深く、情熱的に、とてつもなく愛しげに。
「もう死んでも離さねーからな」
なんて、悔しそうに耳元に囁かれて
俺の鎖骨に夢中で吸い付いてきた隆志がなんだか可愛いく感じて、俺は笑いを堪えながら
「うん」
と言った。
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