《MUMEI》

あれから、安斗から連絡がない。

自分からも、連絡しなかった。

元々、安斗は連絡をあまり取りたがらないやつだから、そこまで気にしてなかった。

けど、あの日からもう2週間過ぎてる。




♪♪♪♪♪♪

携帯が鳴る。

ほら、安斗だ。


―――――――
今日行くからな
―――――――


淡々としたメール

一つため息をして帰宅した




ピンポーン


ドアを開けると、安斗がいた。

「よう」

俺は答えずに中に戻る。

安斗は静かにドアを閉めて、俺の後ろをついてくる。
部屋の中に入り、コートを脱いでネクタイを器用に緩める。


「悪かったな、連絡しなくて。あのあと仕事が急に入ってよ。あー疲れた…」

本当に疲れた顔をしていた。

「元気だったか?」

「学校ちゃんと行ってるか?」

「飯も食ってるか?」


一気に質問されて、どれから答えたらいいのかわからなくて、黙ったままになってしまった。


「……有人…」

名前を呼ばれて顔を上げると、安斗の顔が近づいてきた。

突然のことでびっくりしたのと、久しぶりのキスに照れてしまい、俺は後ろに引いてしまった。


「……」

「……」

「……んでだよ…」

「え?」

「何で避けんだよ!!」

ビクッ

「いいかげんにしろよ!!何なんだよお前のその態度!!ふざけんのもいいかげんにしろ!!!」


安斗が、キレてしまった。

「もういいわ。お前の不機嫌に付き合ってやるほど暇じゃねぇし、嫌われてまで一緒にいることねぇからな」

「っ…や……」

「じゃあな」


怒りを露にしながら、安斗は出て行った。







いつのまにか、俺は泣いていた。

あんなに怒った安斗を見るのは初めてだった。

だけど、怒っていたけど、安斗の心は俺が考えてたのよりもずっと、


傷ついていた…


俺は、愛してた人を、愛してくれた人を、傷つけた

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