《MUMEI》 あの日の瞳陽菜の腕を拘束している手錠に手を掛けると、陽菜がホッとした表情を見せた。 「上手くいったと思ってる?」 僕が言うと、陽菜の表情が一気に凍りついた。 「今更なにを話すの?僕は陽菜の嘘をこれ以上聞きたくない」 あんなに僕に怯えてたのに、僕を馬鹿にしたような嘘ばかりつく陽菜が、許せなかった。 「嘘なんか…ついてない…」 「もう、いいよ…聞きたくない……陽菜は僕に服従したように見せて、ずっと僕を馬鹿にしてたんでしょ?」 「違う…」 「僕と真鍋比べて…僕とオヤジ比べて…」 「違う…」 「何人もの男相手にしてれば、すぐにイッちゃうような厭らしい体になるよね」 「……やめて」 「どんな人に開発されたの?僕を犬みたいに扱ってたクセに陽菜もずっといろんな人の犬だったんだ?」 「やめてッ!!」 陽菜が、悲鳴のような声を上げた。 「……お願いだから、これ外して…ちゃんと話聞いて…逃げたりしないから…裏切らないから…お願いします」 目に涙を溜めながら言う陽菜の声は震えていたけど、僕に怯えて震えてた陽菜と違って、僕は悩んだけど手錠を外してあげた。 自由になった陽菜の白くて細い腕が、僕の顔に伸びてきて、冷たい手が僕の顔を包んだ。 「ごめん…ごめんなさい、眞季…いっぱい傷付けたよね」 そう言った陽菜の目は、子供の頃と同じ目をしていた。 いつも一緒にいたときの、あの優しい目…。 前へ |次へ |
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