《MUMEI》
特別
「あの日…眞季のあんな姿見なきゃ良かった…」

陽菜が僕の顔を、長い指で撫でながら言った。

「…違うね…あたしがちゃんと認めてあげてたら良かったんだよね…眞季だって男の子だもん…」

陽菜が、大きく息を吐く。

「眞季は…いちばん大切な人だったのに、あたしは子供だったから…眞季の男の子の部分を受け止められなかったの…」

ゆっくり、昔みたいに優しい口調で話すから、僕は自分が話すタイミングがわからなくなっていた。

「…眞季…これから誰にも話さなかった話するね?あたしが、ずっと隠してきた話……」

陽菜の言葉に心臓が、ドクンッと鳴る。

「…怖くて、話せなかったの…ずっと……」

陽菜は、苦しそうな表情で言ってから、僕の首に腕を回してきた。



教室で僕に抱きついてきた陽菜を、思い出した。
……いや、あの日とは何かが違う。

けど、僕が陽菜の特別だって感じるには、充分なような……。




僕は、そっと陽菜を抱き締めた。

「あたしの初めては、眞季だよ?嘘じゃない」

あんなに信じられなかった言葉なのに、僕は頷いた。

「あたしの処女は、とっくに無くなってたけど…初めては、眞季なの…」

「……どういうこと?」

陽菜の腕に、力が入る。

「……あたしは…あたしの、初めては…人間じゃ…ないの」






人間じゃない……?





陽菜の言葉は、意味がわからなかったけど、その異質な感じに呼吸が苦しくなる。

「…眞季が持ってるみたいな道具が…あたしの初めての相手だった……」

「…自分で…したって…こと…?」

せっかく陽菜が、昔みたいに僕を求めてるのに、僕の想像力豊かな頭と、陽菜の匂いが下半身を熱くする。

「違う、無理矢理だった…」

当時のことを思い出したのか、陽菜は泣いてるみたいだった。

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