《MUMEI》
彼女の愛
「痛いのも怖いのも、もう嫌だって思ってたのに…あたしは…っ、犬だったから…、汚い人たちに開発されてきたから…、全部…眞季の言う通りだよ…あたしは……っ」

そこまで言って、陽菜は言葉を詰まらせた。

「虐められて感じてたんでしょ?支配されて僕の色に染まっていくのが気持ち良かったんでしょ?」

陽菜が、ゆっくり頷く。

「陽菜…愛してるよ…陽菜の居場所はここだよ…陽菜はずっと僕といればいい」

やっぱり、噂は噂だ。
真鍋に騙されて、自分の気持ちがわからなくなっただけで、陽菜はずっと僕を想ってくれてた。
僕に絡みつく細い腕を引きはがし、その絡みついていた腕を撫でた。

「暴れるから手首が傷だらけだね…」

陽菜の手首は、手錠が当たっていた部分だけ、赤くなって所々擦りむけていた。
僕は擦りむけた場所に、何度も口付けた。


陽菜は真鍋でも汚いオヤジでもなく、僕の為に耐えてくれていたんだ…。
どうして理解してあげれなかったんだろう、いつも一緒にいたのに…僕は、嫉妬に駆られて…。


陽菜の全てが愛おしくて僕は、柔らかい頬っぺた、唇、濡れた瞳に口付けていき、また唇を重ねようとすると、僕の口に陽菜の指が触れた。

「…眞季……眞季はあたしのいちばんだよ?」

「僕も…僕も陽菜がいちばんだよ?」

「…眞季と一緒にいたい…ずっと…」

陽菜の口から、そんな言葉が聞けるなんて、思ってなかった。
やっぱり陽菜と僕は、一心同体なんだ…。

「ずっと一緒だよ、僕と陽菜はずっと一緒、誰にも邪魔させないから」

すごく幸せだった。
陽菜が僕を求めてる…。体も心も、僕を求めてる。
こうなることを、ずっと望んでた…。

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