《MUMEI》 昔みたいに「…昔みたいに…一緒にいたいの…」 「うん、昔みたいに一緒にいよう?昔、陽菜が家出しようって言ったの覚えてる?」 「……うん」 陽菜が、微苦笑を浮かべた。 「あのときも何かあったんだ?」 「…うん」 「そっか…、今度家出するときは公園じゃなくて遠くに行こう?どこか遠くに一緒に行こう?」 「…うん……」 「そのまま二人で住める家借りて一緒に住もう」 「…眞季…」 僕は幸せだと思ってた。 陽菜が泣いてる表情を見ると、興奮する。それは変わらない。 だけど、こうしてゆっくり、二人の世界にいるのも悪くない、そう感じてた。 普通の恋人同士みたいなのも、陽菜とだったら幸せだと、陽菜が僕だけを見てくれるなら、僕だけを求めてくれるなら…そう感じてた。 なのに、陽菜は…… 「…そうじゃ…なくて……」 「え?」 「あたしたち……昔みたいに…戻れないかな…」 それって…どういう…… 「何も…なかったときみたいに……」 陽菜は僕の目は見ずに、そう言った。 前へ |次へ |
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