《MUMEI》
似合った関係
「どういうこと…?」

「…眞季は、あたしの家族みたいだったの…あたしの家族は家族じゃないから…眞季が家族みたいだった」

…家族……?

「いつも一緒にいてくれる眞季は友達よりも大切な存在だったの…だから、眞季とあたしには男女の関係なんて、似合わないよ」

なんだ…。
陽菜はきれいごと並べて、僕を拒んでるだけか…。


家族?
なんだそれ…。

陽菜は昔から女だよ。
誰よりも特別で、大切だったけど、陽菜は女だよ。


僕を興奮させてくれる女だって、陽菜しかいない。


家族なんかに、興奮しないよ。

「あたしがしてきたことを許して欲しいなんて言わない、あたしが嫌だったらあたしを避けてもいい」

笑っちゃいそうだった。
『許して欲しいなんて言わない』って…。


陽菜は泣きながら『許して下さい』って言うのが、お似合いなのに。


なに言ってるんだよ…。

「あたしは眞季がしたこと全部忘れる…このことも誰にも言わない」

陽菜、自分で言ってたよね?
『眞季だって男の子だもん』って…。
『あたしが認めてあげてれば良かったんだよね』って…。

「眞季の好きなようにしていいから…ね?」

二回目だね、陽菜。
陽菜は二回も僕を、裏切るんだね…。
『裏切らない』って、言ってたのに……。

「わかったよ、陽菜…僕も陽菜がいちばん大切だから」

僕が言うと、陽菜は安心したように微笑んで、

「ありがとう」

と言った。
そして帰る準備をして、家に帰って行った。






僕は──…
陽菜のいなくなった部屋で、枕に顔を埋めて叫んだ。
叫びすぎて目眩がして、そのまま目を閉じると、枕から陽菜の香りがして、涙が溢れてきた。


いちばん大切な人に、二回も裏切られたことが悲しくて、僕は泣きながら叫んで暴れた。

なにが、普通の恋人同士だ。
二人の世界なんてない。
僕が陽菜を傷付けない限り、二人の世界なんて築けない。

叫びながら、泣いて暴れると、息が上手くできなくなる。
僕は薄暗い部屋で、壁にもたれながら獣みたいに、荒い息を繰り返し、そのまま意識を失くした。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫