《MUMEI》

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「バカ言え、そんなんで死んでたまるか!」

反射で怒鳴ると彼はおかしそうにケラケラ笑い、だいじょーぶ!とあっけらかんと答えた。

「下準備は抜かりなくしっかりやるし、僕のプラン通りに君が動いてくれたらまず失敗はあり得ないよ。だって僕、天才だから」

俺は軽薄な笑いを浮かべる榊原を睨み付けた。自分のことを平気で天才とほざくことも気に入らないが、それよりももっと腑に落ちないことがある。

「何だかんだ言っても、全部お前の都合が良いだけじゃねぇか」

榊原が前に俺の家へ訪れた時、

『今回は君に不利なわけじゃないと思うよ』

確かにそう言った。

さっきだって、エゴに付き合わされるのは御免だと啖呵を切った時にも、『今までとは違う』と言っていたのに。


「ふざけんのもいい加減にしろ。さんざん気を持たせるようなこと言って、結局は俺を丸め込もうっていうハラだろーが」

榊原ならこの、今の俺の反駁にまたヘラヘラと言い返してくるかと思ったが、意外なことに急に黙り込んだ。予想外の反応に逆に俺が戸惑う。

この沈黙はなんだよ…と言葉を紡ごうとした時、

榊原が唇に淡く笑みを落とした。

「そうだね、確かにハッタリだったよ、最初はね」


…って、やっぱりハッタリかよ!

と、思わず突っ込みそうになったが、添えられた『最初は』という言葉が引っ掛かる。

俺が黙っていると、榊原は急にスウッと笑顔を消して、真っ直ぐ見つめてきた。

そして突然、意外な話を始めた。

「ここ最近―――1ヶ月くらいの間に、この界隈で女子が失踪しているのは知ってるよね?」

もちろん知っている。始業式でも先生がクラスメイトへ申し渡していた。

俺が頷いたのを確認してから、榊原は続けた。

「頭の固いマヌケな警察は、あの事件を変質者による誘拐と考えているようだけど、アレはそんな単純なものじゃない」

まるで失踪事件の全容を知っているかのような榊原の口振りに不信感が募る。

「それじゃ何だって言うんだよ?」

小さく尋ねた俺の顔を見つめ、榊原は一度ゆるりと瞬いたあとで、

「『祟り』さ」


気違いなことを口にした。



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