《MUMEI》

「おは…」



ドアを開けた理紗は理解する。



「よう…ございます…」



こんなに疲れ切った様子の人間から、


気配など感じ取れるわけがなかったことを。



「…うはよぉ゙。」



クロの部屋。


そこにあったのは精気の抜けた表情の4人。


いや、


正確には机に突っ伏しているクロの表情は見えてはおらず実質は3人。


だがその様子からクロの表情も他の3人と変わらないであろうことが容易に理解できた。



「な…何があったんですか一体?」



「ん゙〜っ…」



「まぁ…簡単に説明すれば今日の為の準備をしてました。」



「しかし…」



「さすがに夜通しで試合の映像を見んのは堪えんな…」



「夜通しって…まさかあのあとずっとですか…?」



「ん゙〜っ…うん。」



「つか…もうタイムアップか…」



「結局…見えてきたんだか来ないんだか…」



「ん゙〜っ…」



先程から唸り声をあげているクロは一切顔を上げる様子がない。



「おいクロ…そろそろ顔上げろ。」



「ん゙〜っ…」



「準備しね〜と。今日は1回赤高に顔出すんだろ。」



「ん゙〜っ…ん゙〜っ…ん゙〜っ…ん゙〜っ…なぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」



不気味さを一層増した唸り声と共にクロは顔を上げる。



「………しゃあないか。」



起き上がりポツリと呟くクロ。



「………勝ち筋っていうくらい確証の持てるもんは何ひとつないけど、


数パーセントくらいは勝つ確率上げれただろ。


はぁ…全く…」



(ここまで調べ上げて成果がこんなもんか…


こんな低い確率で勝負に挑まなきゃなんないなんて…


今まであいつらに負けてきたチームがどんな気持ちで試合に臨んでたんか少しは理解できた気がするよ…)



「うだうだ言っててもどうしようもね〜だろ。」



「………ん。」



(仕方ない…)



「………行こうか。」

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