《MUMEI》

「おざっすクロさんッ!!」



「おっ…す。」



体育館は熱気に包まれていた。


外の世界とはまるで違う空気に。



(いったい…何時からやりゃこんな空気が出来上がんだよ。)



クロは笑みを浮かべた。



「お前ら、朝からそんな汗かいてど〜すんだよ!!」



叱っているような言葉の内容とは裏腹に、


表情と口調は明る気であった。



「だって…何か…なぁ?」



「うんうん。俺たちが今日頂点に立てんのかと思うと気持ちが高ぶってしゃ〜ないっすもん!!」



(…なるほどね。)



ボソッ…
「かっこいいじゃん…」



「え?なんすか?」



「バカばっかだなって言ったんだよ。」



「なんすかそれぇッ!!」



「あ〜...何かアホくさくなった。」



「はぁ?」



(勝負は始まんなきゃわかんない。


どんなに悩んだったって机上の空論。


マイナス思考に考えてる僕なんかより、


難しいこととっぱらって勝つって信じきってるこいつらの方がよっぽどかっこいいや。


らしく…なかったね。


常になりたい自分が選ぶであろう選択肢を選ぶんだ。

自分を、


嫌いにならないように。)



す〜っ…



クロは大きく息を吸う。



「集合ッ!!」



「はいッ!!!!!!!!」

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