《MUMEI》 裏切者同士「体育館裏なんて、いちばん人気のないとこに呼ぶなんてね…真鍋は本当に危ない人だね」 陽菜を保健室のベッドに座らせ、カーテンを閉めた。 陽菜は相変わらず、黙ったままで俯いている。 「なに話してたの?」 陽菜は、なにも答えない。 「言えないこと?」 陽菜が首を振る。 「昔みたいに戻りたいって言ってたのに…なんか昔と違うね」 チラッと僕を見てから、陽菜はまた俯いた。 「ねぇ…今日僕の家に来ない?昔みたいに僕の家で遊ぼうよ」 陽菜は、まだ黙っている。 「陽菜にもらったお人形もまだあるんだよ?懐かしいでしょ?」 「…今日は…用事があるの」 陽菜が、振り絞ったような声で言った。 「そうなんだ…じゃあ手伝うよ」 「大丈夫、悪いし…」 「そんなことないよ、昔だったら陽菜はありがとうって言ってくれたのに…そんなんじゃ昔みたいに戻れないよ?」 「…さっき……なに言おうとしたの…?」 俯いたままで、そう言う陽菜の声は、震えている。 「さっきって?なんのこと?」 「……言うんじゃなかった」 陽菜が、ぽつりと言った。 「…眞季は…あたしの気持ちわかってくれると思ってたのに…」 陽菜の手に、涙が落ちた。 「あたしが馬鹿だった…!あんな話しなきゃ良かった!眞季を信じなきゃ良かった!眞季も他の男と一緒だよっ!!」 「他の男?でも真鍋とは違うんでしょ?」 陽菜が僕を、睨み付けた。 「僕も陽菜を信じなきゃ良かったよ…裏切らない、ずっと一緒にいたい……あれは嘘だったの?」 陽菜は、また黙って俯いた。 「僕の奴隷でいいって言ったよね?僕以外の男と仲良くしないって…」 前へ |次へ |
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