《MUMEI》 僕の秘密「でも…っ、昔みたいにって言ったよ?昔みたいに戻りたいって言ったもん…」 陽菜が訴えるような目を、僕に向けた。 追い詰められると陽菜は、子供みたいになるから僕の嗜虐心が煽られる。 「陽菜が昔みたいに戻れてないじゃん」 すぐに僕から視線を反らす陽菜が逃げられないように、僕はしゃがんで陽菜の瞳を見つめた。 「昔だったら学校に行くのも一緒だった、僕の家にだって毎日来てた…」 「…今日は…本当に、用事があるの……」 泣きそうな顔で、陽菜が言った。 用事があるなんて、嘘に決まってる。僕にはわかる。 陽菜を、ずっと見てきたから…。 「じゃあ、どんな用事があるのか教えてよ」 陽菜は暫く緊張した様子で黙っていたけど、ゆっくりと口を開いた。 「……言ったら…いけないって思ってたけど……、あたし…眞季の秘密…知ってる……」 陽菜の言葉に一瞬、不安を感じたけど、今更なにか言われたとこで、陽菜が僕より優位な立場になれるとは思えず、僕は冷静だった。 「僕の秘密ってなに?」 「…佐伯……」 陽菜はそれだけ言って、黙ってしまう。 そんな陽菜の様子で、陽菜の言う『僕の秘密』が、なんとなく予想できた僕は、思わず笑ってしまった。 「ははっ、陽菜見てたんだ?やっぱり変態だね」 陽菜が驚いた顔で、僕を見た。 「どうしたの?驚いた顔して。もっと僕が取り乱すかと思った?」 陽菜が眉をひそめる。 「もしかして、僕の弱味握ってるくらいの気持ちでいた?」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |