《MUMEI》
僕の秘密
「でも…っ、昔みたいにって言ったよ?昔みたいに戻りたいって言ったもん…」

陽菜が訴えるような目を、僕に向けた。
追い詰められると陽菜は、子供みたいになるから僕の嗜虐心が煽られる。

「陽菜が昔みたいに戻れてないじゃん」

すぐに僕から視線を反らす陽菜が逃げられないように、僕はしゃがんで陽菜の瞳を見つめた。

「昔だったら学校に行くのも一緒だった、僕の家にだって毎日来てた…」

「…今日は…本当に、用事があるの……」

泣きそうな顔で、陽菜が言った。
用事があるなんて、嘘に決まってる。僕にはわかる。
陽菜を、ずっと見てきたから…。

「じゃあ、どんな用事があるのか教えてよ」

陽菜は暫く緊張した様子で黙っていたけど、ゆっくりと口を開いた。

「……言ったら…いけないって思ってたけど……、あたし…眞季の秘密…知ってる……」

陽菜の言葉に一瞬、不安を感じたけど、今更なにか言われたとこで、陽菜が僕より優位な立場になれるとは思えず、僕は冷静だった。

「僕の秘密ってなに?」

「…佐伯……」

陽菜はそれだけ言って、黙ってしまう。
そんな陽菜の様子で、陽菜の言う『僕の秘密』が、なんとなく予想できた僕は、思わず笑ってしまった。

「ははっ、陽菜見てたんだ?やっぱり変態だね」

陽菜が驚いた顔で、僕を見た。

「どうしたの?驚いた顔して。もっと僕が取り乱すかと思った?」

陽菜が眉をひそめる。

「もしかして、僕の弱味握ってるくらいの気持ちでいた?」

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