《MUMEI》 条件「オマエついに女装が趣味になったの?」 制服姿の僕を見て笑う佐伯は、中学の頃より背も伸びていて、僕と同じくらいの長さに伸びた髪も、染められていて…同じ長さなのに僕とは正反対で、佐伯らしいというかなんというか…。 あの頃より余裕があって、威圧的だった。 「別に趣味じゃない…」 「あ?オマエなんか生意気になってね?」 佐伯はあの頃より余裕に見えたけど、僕だってあの頃より余裕がある。 「久し振りの主人との再会なのに、そんな態度でいいのかよ?」 僕は佐伯が欲しがってたものを、手に入れたんだから、佐伯より余裕があるんだ。 「そういや今森はどうした?オマエ今森のストーカーだったろ?まだ続けてんの?つーか、その制服も今森から盗んだやつだったりして?」 「陽菜は…僕に管理されてるよ」 「は?」 僕を馬鹿にしたように笑ってた佐伯は、僕の言葉を聞いて一瞬、驚いた顔をしたけど、また鼻で笑った。 「陽菜は僕に管理されてる、僕の奴隷だから」 「オマエちょっと見ない間に頭おかしくなった?」 「おかしくなってない、陽菜は僕の奴隷だよ」 「妄想もそこまでいくとヤバいな…」 佐伯の表情が、引きつってるように見えた。 僕は佐伯も、こんな表情するんだな…なんて、冷静に思っていた。 「妄想じゃないよ…陽菜は変態だからね」 今日、僕の頭をグルグル回っていた佐伯の言葉を、思い出した。 いや…佐伯を見たときから、僕の頭はそれでいっぱいだったのかも知れない。 もしかしたら、今日一日中考えていたことが、佐伯と再会させたのかも…。 「信じられないなら見せてあげるよ…条件があるけど」 「条件!?」 佐伯は小さく笑ってから、僕を睨んだ。 「ふざけんなよ…主人に条件出す飼い犬いねぇだろ」 「佐伯くんにはいい条件だと思うよ?」 「は?」 「陽菜を犯して欲しいんだ…っていうより虐めて欲しい」 「それが条件…?」 佐伯は呆気に取られた顔で、僕を見た。 今まで陽菜を犯されたくない一心で、佐伯に従ってきた僕が犯すだけじゃなく、虐めて欲しいなんて言ってるんだから、驚くのも無理ないけど…。 でも佐伯のその驚いた表情に、笑いそうになった。 佐伯が、こんなに驚くなんて…。 こんなに間抜けな表情するなんて…。 僕は込み上げてくる笑いを、堪えながら言った。 「陽菜は今日、僕から逃げたんだ…だからお仕置きしなきゃいけなくて…佐伯くんならできるでしょ?陽菜がおかしくなるくらいのお仕置き…」 佐伯の口元に、歪んだ笑みが浮かんだ。 僕は知ってる。 本当の僕と正反対の人間は、真鍋みたいな奴。 佐伯は違う。 見た目も人間関係も、僕と正反対でも深い所は、僕と同じ種類の人間。 前へ |次へ |
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