《MUMEI》 捜索「ストーカーのくせに心当たりねぇの?」 一緒に陽菜を捜すことになった佐伯が、先を歩く僕に言った。 「家に帰ってなかったら公園に行ってみる」 「公園って……あそこか…公園なんかにいるか?」 「陽菜はなんだかんだ行く宛てないからね」 「さすがストーカーだな」 佐伯は笑ったけど、僕は笑う余裕なんてなかった。 僕から逃げ出した陽菜がこれから、どんな表情をするのか、どんな声で鳴くのか…。 怒りと興奮が渦巻いた妙な気分だった。 「いるか?」 陽菜の家の様子を探る僕に、佐伯が言った。 「…帰ってない」 「こんな閉めきられた家見てよくわかるな」 佐伯が笑う。 「公園行ってみる」 僕たちはいつもの公園に向かって、歩き出した。 …──公園に着くと、身を隠せそうな遊具の中を探した。 「いねぇじゃん」 そう言う佐伯を無視して、僕はトイレに向かった。 佐伯も面倒くさそうに、僕についてきた。 「なにか物音したら入って来て?」 僕は佐伯にそう言ってから、トイレに入った。 前へ |次へ |
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