《MUMEI》 一日目A〜夏希〜「先に行け。」 「(へ〜意外と力あんのね…って言うか)命令すんな。」 そう言って風帆は夏希を睨みつける。 「へいへい。んじゃ、先に行ってください。」 「ふん。」 風帆ははしごにつかまった。そして、下へとおりて行く。すぐ上に夏希がいる。 ゴゴゴゴゴ 「ん?」 ダーン 大きな地鳴りとともに、激しい揺れが二人を襲う。 「キャァァァァ!!」 はしごにしがみつく。しばらくして揺れは止まった。 「・・・急いだ方が・・・良さそうだ。」 「分かってるわよ。」 二人ははしごを降りきり、外に出た。 「やっと出れた。」 「よし、遠くに逃げるぞ。」 「そう。頑張って〜私は行かないから。」 「いいから行くぞ。」 「やだ。」 「なんで?」 「私はあんたが嫌いだから。」 「それは態度みりゃわかるよ。けど・・・。」 夏希は風帆の腕を掴んだ。 「ちょっと!!」 「俺は人を見殺しにするほど非常な人間じゃないんでね。このままお前を置いてって後から死んだって聞いたらこっちが気分悪りぃ。」 「そんなの私には関係ないでしょ!!」 「いいから来い。」 夏希は思いっ切り風帆をひっぱっていった。 小高い丘の公園まで来て夏希はおかしなことに気が付いた。 「(人が・・・いない?)」 そう、まだ、だれも見ていないのだ。 「おかしいだろ。」 「せめてラジオでも聞けたら。」 「ラジオ・・・。そうだアルティメットで。」 夏希はアルティメットをいじり、ラジオをつけた。 『繰り返します。東京湾沖で超巨大地震が発生。およそ20分後、東京都に約40メートル強の津波が到達すると見られます。海岸の皆さんは避難してください。また、政府は東京都及び神奈川県・千葉県の完全封鎖を決定しました。東京都・神奈川県にお住まいの方々は八王子市から埼玉県へ。千葉県にお住まいの方々は佐倉市から茨城県へと避難してください。また、八王子市・佐倉市以外の東京都・神奈川県・千葉県の県境には閉鎖用鉄柱が現れます。皆さん、充分に注意してください。』 「ウソ・・・だろ。」 夏希はつぶやいた。ここは港区。八王子市まで何百キロと離れている。 「どうする?如月。」 返事はない。 「如月?」 夏希は振り返った。 風帆の顔が青ざめている。 「あ・・・れ・・・。」 風帆が恐る恐る指差す。そこには、海が見えた。ここまでの距離は2キロといったところか。 「海がどうか・・・。!!」 海は少しずつ奥の方から膨らんでいた。大きく、不気味に黒く輝きながら。 「つ・・・な・・・み・・・。」 海からは巨大な津波が少しずつ日本に押し寄せて来ていた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |