《MUMEI》
一日目C〜夏希〜
「如月、如月。」
「ん?んん。」
風帆は目をさました。そこには、夏希の姿がある。
「あんた、私に愛想つかしてでてったんじゃ無いの?」
「なに言ってんだよ。ほら、湿布薬とテーピングとサポーター持って来たから。これで応急処置だけでも。自分で出来るか?」
「出来るわよ!!」
そういって湿布を付け、テーピングを巻き、上からサポーターで止める。
「さってと。これからどうする?」
「別に?」
「もう9:30なんだけど・・・。」
「うそっ。もうそんな時間なの!?」
「今日はここに泊まるしかねえな。」
「冗談でしょ。あんたなんかと一晩過ごしたら、なにされるか・・・。」
「じゃあ、歩くか?」
「無理。」
「なら、どうすんだよ。」
「分かったわよ!!なんかしたら、舌噛んで死んでやるから!!」
「決まりだな。」
「・・・。お腹空いた・・・。」
「だな。あっ、そうだ。」
夏希はポケットから一枚のチョコを出した。
「良かった〜残ってて。ほら。」
夏希はチョコを風帆に手渡した。
「あんたのは?」
「俺は腹減ってねぇから。全部食っていいよ。」
「・・・。甘い。けど、おいし・・・。」
「顔にチョコくっついてるぞ。」
「う、うるさいわね!!ってか、なに人の顔ジロジロ見てんのよ!!」
「別にいいだろ。人は飯食ってる時が一番幸せそうだなとか思ってただけなんだから。」
「ふん。」
「ったく。俺はもう寝るからな。あとは勝手にしてくれ。んじゃ、おやすみ。」
夏希は横になった。
「ねえ。」
「あん?」
「さっきも聞いたけど。なんでそんなに人のために動けるわけ?」
「俺さ。親友を助けられなかったんだ。」
「親友?」
「ああ。あいつ、取り残されたクラスメイトを助けようとして・・・。今、生きてるのかどうかすら分からない。」
「・・・。」
「これ以上、俺の目の前で誰かを失うのが嫌なんだ。」
「赤の他人でも?」
「ああ。」
「ふぅん。」
その日、地震が起こったのが嘘のように、たくさんの星が空に輝いていた。
しかし、本当の地獄は、まだ始まってすらいなかった。

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