《MUMEI》
二日目@〜夏希〜
ー深夜1:37・オフィスビルー
ゴゴゴゴゴ
「ん?」
地面が唸るような音が聞こえ、夏希は目を覚ました。隣(と言っても、3メートルは離れているが・・・。)では風帆が静かな寝息をたてている。
「気のせい・・・か?」
ミシッ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
音は次第に大きくなる。
「気のせい・・・じゃ、無い?」
ドーン
直後、轟音とともに、激しい揺れがくる。
「な、なに!?」
風帆も飛び起きた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
強い揺れが続く。
そして、オフィスビルがミシミシと、音をたてはじめた。
風帆がうずくまる。天井のライトが床に落ちる。
「あっ!危ねえ!!」
夏希は風帆を押した。そのまま風帆を守る様に、おおいかぶさる。
ガシャン ドゴン
窓が割れる音が響く。
「(学校でのよりも・・・強い!?)」
本当はこの地震は5分程の長さだったが、夏希と風帆には永遠の様に思えた。
キィィ キィィ
揺れがおさまり、風帆は閉じていた眼を開いた、目の前に夏希の顔があり、驚く。その夏希の体が風帆にのしかかってきた。
「ちょ、ちょっとあんた、どさくさに紛れてなにして・・・え?」
夏希をどけようとして触れた手に赤黒い液体が付く。
「はあはあ。大丈夫か?如月。」
夏希は無理矢理に笑顔を作った。
「あんた・・・背中に、ガラスが刺さってるじゃない!?」
「大丈夫。」
「・・・。けど・・・。」
風帆はくちびるを噛んだ。
「大丈夫だって。」
そう言って、夏希は起き上がった。
「く、薬かなんか探してくる!!」
そう言って、風帆は真っ暗な中を手探りで進んで行った。
「なんだ・・・。やっぱ根はいい奴じゃん。あいつ・・・。」
夏希はそう、つぶやいた。
・・・
「はい、薬。」
「サンキュー。」
「私、塗るよ。」
「頼む。」
夏希はシャツを脱ぎ、背中を風帆に向ける。
「全部・・・、道はふさがってて、この階に閉じ込められたみたい。」
「そうか・・・。んじゃ、明日の朝に・・・。」
「そんな暇ない。」
「?」
「分からない?さっきの地震は学校でのよりも強い揺れだった。ってことは、津波の大きさも・・・。」
「!!」
「それに、さっきの津波でほとんどの建物が流されてるから、津波を阻む障害は無い。」
たんたんと風帆は言った。
「やべえな・・・それ。」
「どうする?やっぱりここで死ぬ?」
「・・・。いや、死なない。」
「え?」
「絶対に死なない。俺も・・・。お前もな。」
「・・・。」
風帆は俯いた。
「行くぞ。絶対にお前のこと、守ってやるから。」
夏希は立ち上がり、シャツを着て、その部屋を出る。
「私に命令すんなって。」
そう言って、風帆も夏希に続いて行った。

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