《MUMEI》

 「凜、よろしくね」
「はいはい」

私は無意識にあくびをしながら和佳に応答をした。

「夏休みの宿題、手伝ってあげるからさ」

すると、和佳にも良心はあるらしい。なんともありがたい言葉に、私はあくびをかみ殺して満面の笑みを浮かべた。

「じゃあ、よろしくね」
「うん。バイバイ」

私は笑顔で和佳に手を振り返した。

 図書委員に他のクラスの誰がいたかを思い出そうと頭をひねっても、もともと知らないからわからない。私は思い足取りで階段を上った。

 図書室の扉を開くと、そこには既に数人の生徒がちらほらと椅子に座って静かに本を呼んでいた。静粛な空間には、時計の針の音とクーラーが動く音と本がめくられる音しかない。

 居づらい環境だけれど、仕方ない。私も窓に近い適当な席に座って、ぼんやり窓の外を見つめた。

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