《MUMEI》 窓の向こうには、楽しそうに学校から出て行く男女三人組がいた。それとは対称的に大量の汗を流している、テニス部。私は今日たまたま部活に行けないけれど、男女三人組の彼らはバイトに遊びに楽しんでいるのだろう。毎日。 ――部活をやめようか。 私の頭の中でふと、そうよぎった。中学からずっと部活漬けだった私は、あまりそう考えることがなかった。けれど、客観的に見た今の私の毎日がどうしても無駄に見えてたまらなかった。 「出席をとります」 いつのまにか図書委員の担当の先生が立っていた。私は窓から図書室の中へと視線を移す。すると、さっきまで一人で本を読んでいた子たちの隣には人が座っていた。やっぱり私は場違いなのかもしれない。 「一年一組、平間和佳さん」 「あ、平間さんは急用があるので私が代わりに出てます」 「わかりました。――四組、倉橋あやめさん」 倉橋あやめ。たしかに今先生はそう言った。 「はい」 小さいけれどよく透き通った声が私の耳に届く。私は思わず声のした方を勢いよく見てしまった。 前へ |次へ |
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