《MUMEI》
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「すみません！本当にすみません！！」
「いや…あの…」
土下座して謝罪する零汰に、陽平は困惑しきった様子で頭を掻いた。この状況は１０分近く続いているのだ。
「すみません！」
「いや、もういいから…さ」
陽平がムリヤリに近い形で、零汰を抱き上げるように立たせると
（なんだ？さっきと違う…）
起立した零汰と陽平の視線は同じ高さにある。
その眼には陽平を襲いかけたときのような、ギラギラとした光は無かった。
「すみません…ありがとう。」
「…いや」
陽平は立ち去る事も、言葉をかける事も出来ずに、何気なく掛け時計を見上げた。
（四時…十分か。）
「陽平くん。今のうちに、話しておきたい事があるんです。」
そう言った零汰の不安げな、苦痛を感じているような表情に、
陽平は無意識のうちに頷いていた。
零汰は車の後部座席で見せたような、ホッとした表情を浮かべた
不思議に幼さを覗かせる、先ほどとは正反対の表情だった。
しかし掛け時計を見た瞬間に、その表情は緊迫したそれに変わった。
「すみません！時間を無駄にしてしまいました！手短に、要点だけお話しします！」
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「…っめ…！！ころ…っ」
「アンタに僕が殺せるんですか？」
陽平に覆い被さった零汰は、唇を持ち上げた。
「さっき僕がアンタの反撃をモロに受けたのも、《僕が僕を抑制したから》なんですよ？」
「…しら…ぅ、く……」
自身を扱かれて、また陽平の腿が震えた。すっかり勃ち上がったそれは、先端から透明の蜜を零している。
「…すっげー、ベッピンさんですよね。」
零汰の片手が、優しく陽平の前髪をかき上げる。
隙があるとすれば今なのだが、両腕は頭上で交差させられ、陽平のネクタイで教卓の足にくくり付けられているため、逃れようが無い。
蹴りを入れようにも、脚が勝手に突っ張ってしまい、うまく動かせない。
（畜生…最初から罠〈ﾄﾗｯﾌﾟ〉だったってオチかッ！）
陽平は自分の不甲斐なさに唇を噛んだ。
「そんなに苛めたくなるような顔、しないで下さいよ。…それにしても」
零汰は陽平に覆い被さったまま、陽平の側に落ちている紙を拾った。
「……は…」
「こんな情報があったら、スリルが味わえませんよねぇ？」
ビリビリと破かれたその紙には、《三時四十分》《四時二十分》など、幾つもの時間が記されていた。
《それが何を記すものか分からないまま》、陽平はただぼんやりとそれを見ていた。
「間に合わなくて、残念でしたね？」
小動物のように首を傾げる零汰だったが、瞳の光はそれとはかけ離れたものだった。
（理性を…思考を止めるな…っ！）
我に帰った陽平は必死に突破口を探った。
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