《MUMEI》
異様な空気
僕に“許して下さい”と言いたかったのか、“佐伯じゃなくて僕に虐めて欲しい”と言いたかったのか…。

陽菜が僕の名前を、何度も呼んだ真意はわからないけど、僕を興奮させたのは確かで…僕は袋の中で苦しそうに呼吸している陽菜から、目が離せなかった。



暫くして陽菜が落ち着くと、道具を物色し出した佐伯が、小瓶を手に取った。

「コレ…なに?」

「媚薬だよ」

僕が言うと佐伯は薄い笑みを浮かべ、陽菜の秘部にそれを塗ってから、自分の鞄からも茶色い小瓶を取り出した。

「俺も持ってんだよ」

佐伯が取り出した小瓶は紛れもなく媚薬で、僕は佐伯が常に媚薬を持ち歩いているんだろうか…と考えると、その異常さに恐怖と期待が入り交じったような、自分でも理解できない気持ちが込み上げた。

「口開けろ」

佐伯は陽菜の口元に、小瓶を近付けたけど陽菜は、口を堅く閉じている。
佐伯はそんな陽菜を見て、歪んだ笑みを浮かべてから陽菜の鼻を摘まんだ。


鼻を摘ままれた陽菜は、暫くそのままにしていたけど、やがて苦しそうに大きく口を開け、佐伯がその瞬間に小瓶に入った液体を流し込み、陽菜は液体を飲み込んだ。
無理矢理飲まされた陽菜が、苦しそうに咳き込む姿を見ていると、抱き締めたくなる。

「15分はこのままだな」

そう言うと佐伯はポケットから煙草を取り出して、火を点けた。
煙草の匂いと、異様な空気が部屋に広がり、僕まで呼吸が苦しくなる。

「戸村、灰皿」

佐伯に言われ、僕は灰皿の代わりに空き缶を持って来た。


佐伯が空き缶に灰を落とすと、静かな部屋にジュッという音が響いた。
陽菜は何かを訴えるように、僕を見つめているけど、その潤んだ瞳と紅く染まった頬が明らかにさっきと違って、僕を興奮させる。


煙草を消した佐伯が、蝋燭を手に取ると火を点けた。

「…ゃ…やらぁ」

蝋燭を見た陽菜が喘ぐように言ったけど、その表情は既に虚ろで言葉になっていない。

「早っ、もう呂律回ってねぇじゃん」

佐伯が笑った。

「咥えろ」

佐伯が蝋燭を陽菜の口もとに持って行くと、陽菜は泣きながら蝋燭を咥えた。

「あんま暴れると落ちて火傷するから気を付けろよ」

佐伯が言った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫