《MUMEI》
拉致
「どうするつもり?それ」
呆れた口調でユキナは倒れた男を顎で指した。
「聞くんだよ。こいつらが何者か」
「何者って……」
「だって、どう考えても一般参加者じゃないだろ。こんな変な機械持ってるし。なんか、早くしないと不合格とか言ってたし」
「不合格?」
「ああ。さっき追ってきた奴らが言ってた」
「へえ。なんだろ?」
サトシは首を傾げた。
「だから、それを聞くんだよ。ほら、こいつ運ぶの手伝え。俺、怪我人なんだから」
「あ、うん」
ユウゴとサトシはそれぞれ男の腕を掴み、ズルズルと引きずって移動した。

「で、どこに行くわけ?」
二人の後ろを歩きながらユキナは言った。
「そうだな。この際、どこでもいいけど」
 ユウゴは歩きながら、適当な場所を探す。
気絶した人間は何故か凄まじく重い。
ただでさえ、さっきのビル跨ぎで傷が開き気味なのだ。
このまま歩き続けては体力が持たない。

「あそこでいい。運ぼう」
ユウゴは近くにコンビニを見つけると、その中に入った。
「これ、使う?」
「おお。サンキュー」
 ユキナがどこからか拾ってきたガムテープを受け取り、奥の事務所へ男を運ぶと、ひっくり返った机の足にその両腕を縛り付けた。
暴れないように両足もぐるぐるに巻いておく。
「さて、と」
ユウゴは手をパンパンと叩いて、男の前にしゃがみ込んだ。

「やるか」

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