《MUMEI》
異変
「あ!ほら、やっぱ置きっぱなしじゃん。」


部屋に入ると、確かに洋平の言う通り写真があった。
テーブルの真ん中に裏返して置いてある。


「こんな見える所にあるんなら、誰か気付いたっていいのにな?」


洋平はそう言いながら写真を拾い上げ、もう一度それを見た。


「あれ…?」


しかしその直後に洋平の動きは止まり、気のせいか顔が徐々に青ざめてきた。


「どうした?」


異変に気付いた司が声を掛けると、洋平は何も言わずにその写真を突き出した。

「何?」

「いいから見てみろよ…」

ふざけているだけなのか何なのか、洋平の声が僅かに震えている。
司は特に気にする訳でもなく、何の気無しに写真を見た。
だが、直ぐにその理由が分かった。


数分前までは、確かに五人写っていたはず…


「真弓が…いない?」


真ん中に立っていたはずの真弓が何故か消えていたのだ。
その空間すらなく、まるで最初からそこにいなかったかのように、今は四人が写真の中央に並んでいる。


一体どういう事なのか?




まさか写真の中の者達が動く訳がないだろうし…





二人とも青ざめてしまい、何から話せばいいか分からず、暫く沈黙が続いた。





しかしそれは、突然鳴りだした洋平の携帯の着信音で破られた。
画面を見ると、美樹からの電話だった。

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