《MUMEI》
愛鳥
一言で彼を例えるなら、鷹だ。
均整の取れた美しい顔に眼鏡を着け、長い手足の体躯をスーツに包んでやってきた。
まるで夜に溶けそうな黒髪を、好感を持てる形に切り揃えていた。


「……今晩は。」

急に現れたので暫く考えていると、名刺を渡され、以前社長との知り合いで交換したことを思い出す。


「息子さんとどうぞ。」

菓子折をパスのように渡されて、どんどん家に入ってゆく。


「あ……」

気まずそうに彼は、鷹を見上げた。
ソファに座っていた彼を見据える鷹の目は、特に言葉を発しなかったが、刃を突き付けられたように、諦めて二人で部屋に篭っていった。
彼にとって信用の置ける人物だと見て取れる。


息子も訝しげにしているが、私はそれに、扉の向こう側への不安と知りたいという探究心が加わっていた。

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