《MUMEI》
運命の席替え アイツとの日々の始まり 1
 恋をしてる、と思っていた。けど、してなかった。
 恋を分かてる、と思っていた。けど、分かってなかった。
 今までは、ただ好きなだけ、ただ気になってるだけ。それだけだった。
 心から好きだなんて思ってなかった。
 そんな私―川本愛美(かわもとあいみ)は小5の6月、初めての恋、“初恋”をした。初めて心から好きと思った人ができた。
 たとえその恋が実らなくとも、最後まで諦めない。そう実らなくても―

 私のクラスでは、月に一度席替えを行っている。それが今日だった。しかし、
「…何で…何でこーゆー日にかぎって風邪なんて引くのよー!!」
 席替え当日に風邪を引いてしまったのだ。
「最っ低ー。楽しみにしてたのに…」
 だが、私はこの時この席替えで、運命が変わることを知らなかった。

 次の日。風邪も治り、元気になった私は学校へ行った。
―ガラガラ
「おはよー。」
「あ、おはよー!愛美ちゃん!」
「大丈夫?愛美ちゃん。」
 この2人は、私の友達の奈央(なお)と華恋(かれん)。2人ともおっとりとしていて、少しおっちょこちょい。似たもの同士って感じ。

「あ、愛美ちゃんの席はここね。」
 奈央ちゃんが指さした所は、入り口に近い一番前の席。

「ありがと。で、隣は誰?」
「えっと確か…あ!東條廉(とうじょうれん)君だよ!」
「れ、廉!?」
 東條廉とは、(多分)クラスで一番モテて、かっこいいと評判の男子。
 
 まぁ別に、自分は廉のことはなんとも思っていなかったが。
   そう、その日までは―

「ふぁぁ…寝みぃー…」
 眠たそうな目をこすりながら、廉が教室に入ってきた。
「あ、おはよー廉。」
 私が話かけると、驚いたかのように目を大きく開いた。
「あはよ、愛美来たんだ。」
「う、うん。」
―キーンコーンカーンコーン…
「あ、先生来る。じゃあまた後で。」
「うん。バイバイ奈央ちゃん、華恋ちゃん。」

「お前、風邪もう大丈夫なのか?」
「え!?あ…大丈夫だけど…」
「そうか、なら良かった。」
「な、何が?」
「別に?」
(良かったって、何が良かったのよ…?)

―授業中
「授業ダリぃ…何も分からねぇ。」
「それは、あんたがバカだからでしょ。」
「うるせーな。これでもやるときはちゃんとやるっつーの。」
「体育の時だけじゃん。」
「うっさいなー。」
「だってそうじゃん。ねー七海(ななみ)ちゃん。廉って正直言うとバカよね?」
 私は、斜め後ろの席の七海ちゃんに聞いた。
「うん、ウチ以上じゃない?」
「お前の方がバカだって。」

「うるせー。お前ら2人ともバカじゃね?」
 そう言ってきたのは、後ろの席の大誠(たいせい)。
「大誠に言われたら、終わりだね。」
「おい愛美、つまりそれって俺がめっちゃ頭悪いことになるだろ!」
「だってそうじゃん。」
「大誠だけにはバカって言われたくないね。」
「同感。」
「な、何だよ!俺だって本気出せば…」
 ガタン、と急に立ち上がった。その時、
「あら、じゃあこの問題は大誠さんに解いてもらいましょう。」
「え!?はぁ!?」
「問2お願いね。」
「う゛…9分の7×4分の3…分かりません…」
「ダメじゃん。」
「だな。」
「バーカ。」
「う、うるせぇ!じゃあお前らやってみろよ!」
「え――。」
「めんどい。」
「やっぱお前らできねーじゃねーかよ!」
 めんどくさいが、私がやるしかない。
「私がやるわ。 先生!その答え、12分の7ですよね!」
「正解です!よくできましたね!」

「やっぱりアンタはバカだったわね。」
「う、うるさいうるさーい!今日はたまたま調子が悪かっただけだ!明日はこんな問題楽勝に解いてやるぜ!」
「無理でしょ。」
「あはははは!!」
 こうしてにぎやかな授業は終わった。

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