《MUMEI》

 そんな仲むつまじく帰っていく二人を見たのは昨日のことだった。

 朝、和佳が学校に来ると真っ先にからかいにいく。

「和佳っ。昨日デートどうだった?」

意外にも和佳は口を尖らせた。

「喧嘩別れした」
「え」

和佳はそれ以上を語ろうとせず、机に伏せてしまった。

「ねぇ、大丈夫?」
「もう、放っておいて……」

 和佳の元気がないのは一大事だ。私はすぐに彼の元に行くことにした。行き先は四組の教室。

 「鶴見」
「おう。どうした」

当の和佳の彼はいつもと変わらない顔だった。一体、どうやって喧嘩別れをしたのだろう。

「和佳と喧嘩したんだって?」

 鶴見は気まずそうに髪をくしゃくしゃにした。

「いろいろあってさ」
「そう。和佳の元気がなかったからさ。なんて喧嘩したの?」

鶴見は途切れ途切れに言った。

「昨日、平間の前の彼氏とたまたま会っちゃって。平間が親しそうに話してて、さ」

やきもちか。和佳も鶴見の前で元彼と話すなんてどうかしている。私のおせっかい精神が働く。

 「わかった。話してくれてありがと」

なんとかして二人の仲を取り持とうと、私は強く決めた。

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