《MUMEI》
ちょっと
「………」
「………」
「何してるの?」
「いや、蝉がさ〜」
授業も終わり放課後である。
にも関わらずいっこうに席を立とうとしない私こと杉山幸介は、その行動の不審さから某クラスメイトこと原夏海に声をかけられている。
以上読者的解説。
「蝉の野郎がよ〜、俺のやる気を根こそぎかっさらっていくんだよ」
「あんたやる気なんて最初からないでしょ、、、ハイ今日のノート」
「流石です」
俺の目線に気づいてすかさずノートを渡してくれる夏海。
一度テストを彼女の力を借りて彼女よりもいい点数をとってしまい、次から大丈夫だねと言われて挑んだ次のテストは惨敗であった。
ということで、日々彼女の力を借りて安定した学力で毎日学校を有意義に過ごしている。
、、、遠くからかけ声やら怒声に似たものが聞こえる。
「なんでやんないのかね〜」
「何が?」
「部活にきまってんでしょう」
「それはお前もいっしょだろう」
「私はバイトがあるんです」
「俺だって自宅警備員という立派なバイトをやっている」
夏海はやれやれといった感じでこちらを見ている。
「じゃ、私バイトだから」
彼女は足早に教室を後にしようした。
「あー、ノートありがとう。毎度のことではあるが」
「ん」
ちょっと照れくさそうに、自慢のポニーテールをなびかせ夏海は去っていった。
教室には俺と、もう一人女の子が座っていた。本を読んでいるらしい。
「さて、そろそろ俺も行きますか」
「ガタッ」
俺が立ち上がるより先に教室中央寄りの席の女の子が立ち上がった。
ちょっと自信無さそうに、肩をすぼめながら彼女は教室を後にした。
「もう少し愛想よくできないもんかねえ」
言わずもがな彼女に友だちなんてものはいないのである。先生すらちょっと彼女には距離を置いているように思える。
「、、、行きますか」
そうして俺も教室をちょっとけだるい感じに出ていくのであった。

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