《MUMEI》

アラームが鳴っている。

七時……十五分……。時間、か。

うるさい目覚まし時計を止め、妙に力の入らない自分の身体を無理やり起こす。

二階の階段を、重い目蓋《まぶた》を擦《こす》りながらノソノソと下りていく。

廊下を進み、居間を抜けて左が台所だ。そこにはいつものように朝食を作り、待っていてくれる、若い容姿の女性がいる。

「おはよ〜……」

半分寝ボケたオレの声に、テレビを見ていたその女性が気付き、ニコリと笑顔。

「おはよう」

優しい返事が返ってくる。

一足早くテーブルの席に着いていた男性二人組は、ほとんど朝食をたいらげていた――

「おう! 兄貴。おはよー」

朝っぱらから威勢《いせい》がいい、この男……近藤栄司《こんどうえいじ》、十五歳。オレの弟だ。

「ん……、おはよう」

口数が少なく、笑っているのをあまり見たことがない……物静かな、そして一家の大黒柱を務《つと》める男・近藤護《まもる》、四十一歳。オレの父親だ。

大きなアクビをしながら、自分もテーブルの席に着く。

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