《MUMEI》 「飲み物は牛乳でいいでしょ? それにしても、最近は事故のニュースが多いわねぇ」 そう言いながら、オレ愛用のコップに牛乳を注《そそ》いでくれる、この若い容姿をした女性こそ、縁の下の力持ち・近藤冴子《さえこ》、三十九歳。 実年齢よりかなり若く見えるが……母親なんです、オレの。 用意してもらった朝食でもいただきますかと、手を伸ばそうとした時―― ――この事故で、会社員の男性が死亡。女子高校生が意識不明の重体となりました。 ふと、テレビから事故のニュースが耳に飛び込んできた。 「うわっ! これ……地元付近の事故じゃねぇの? なぁ、兄貴」 「え? あぁ、そーなんか? コレ」 思わず聞き返すと、栄司は「テレビを見ろ」と言わんばかりに、無言でテレビを指す。 ――壬豊《みとよ》市の、片側二車線の国道で、乗用車が前を走る二台の車をS字状に追い越し、その後、反対車線の歩道を歩いていた女子高校生を撥《は》ね、電柱に激突、横転しました。 この事故で、運転していた会社員・森洋一《もりよういち》さんが、死亡。 乗用車に撥ねられた女子高校生・井下和美《いのしたかずみ》さんが、意識不明の重体です。 前へ |次へ |
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