《MUMEI》
足掻かぬこと
「陽菜…もっと舐めて?僕が陽菜の恥ずかしいとこ舐めてあげたみたいに……優しく」

眞季の言葉で反応してしまった自分を思い出して、私はそれを掻き消すように眞季の唇に舌で何度か触れた。
恥ずかしさと情けなさで、半分ヤケになっていたんだと思う。

そんな私の舌に、違う感触が当たった。

「─ッ!?」

驚いて舌を引っ込め、眞季を見ると眞季は厭らしい笑みを浮かべた。

「ダメだよ、陽菜…ちゃんと続けなきゃ」

「わかってる…」

なんともない、そういうふうに見せるのが、せめてもの抵抗だった。

「もっと舌出して」

静かな声で眞季が言った。



わかってる…。




今は従うしかない。
眞季の要求をなんともないように受け入れ、反応しないことが、今できる抵抗。
無駄に足掻いたって、悪い方向にしか進まない。

わかっているのに、私の舌は思ったように動かない。
それでもゆっくり舌を伸ばすと、まるで獲物を捕らえるように私の舌を、眞季の口が捕らえた。

私の舌を口に含んだまま、眞季の舌が私の舌を舐め回し、痛いくらいに吸い付く。
今まで味わったことのない感覚に、息苦しくなるけど逃げることができずに、私は早く解放されることを願うしかできなかった。


どのくらい堪えただろう。
やっと解放されたと思って息を吐いた次の瞬間、目の前に見馴れた筈のものが見えた。

「今度はこっちを舐めてよ」

少し息の上がった声で眞季が言った。

「…いや……」

無駄に足掻いたって悪い方向に向かうだけ。
そうわかっていた筈なのに、近くで見る眞季のソレは何か別の生き物みたいで…、今まで見てきたものと違くて、私は首を横に振ってしまった。

「許して欲しくないの?舐めないと許してあげないよ?」

……わかってる。
なんともないように、受け入れないといけない。
感情を失くしたように、振る舞わなきゃいけない。
抵抗したって、自分の首を絞めるだけ。

わかってる…。
わかってるけど、怖くて私は縋るような声を出してしまった。

「ほ、他のことにして……お願い…」

「…僕もう限界なんだけどな…どうしてもできないの?」

寂し気な顔で、そう言う眞季に私は、何度も頷いた。

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