《MUMEI》 「……ホントだ」 「な? ここからでも結構近いだろ。身近で事故があったらさ、『自分も気を付けよう』って思うよなぁ」 栄司《えいじ》の言葉に、オレ達三人は「そうだな」と頷《うなず》く。 「気を付けるのも大事だけど、アンタ。今日は早く出るんじゃなかったの?」 ――しまった! そんな顔を見せ、栄司は慌てて朝食の席を立つ。 「ごちそうさま! いってきます!」 それだけ言うと、栄司は疾風《しっぷう》の如《ごと》く家を出て行った。 母さんが「お弁当忘れてる!」とかいう言葉を発する前に。 アトを追っても、ヤツには絶対追いつけないのがわかっているのか、母さんは追いかけようとはせず、ただ玄関先を「これで何度目よ!」ってな顔で見ていた。 「あんなに慌てて、事故にでも遭《あ》わなければいいがな……」 父さんも呆《あき》れた様子だが、それはないだろうとオレは思っている。 栄司は中学サッカー部のキャプテンを務《つと》め、そのスピードとバネ・判断力は、サッカー部の顧問《こもん》やメンバーを始めとし、他校にまでその名を知られる運動能力の持ち主だ。 まぁ、余程《よほど》のことでもない限り、アイツが事故るってのは想像できないし、それは父さんもわかっているだろうと、朝食のポテトサラダを口に頬張《ほおば》る。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |