《MUMEI》

家を出ると辺りは一面の田畑。

近くには用水路があり、水が緩《ゆる》やかに流れていくサマや、その音を聞いているだけで不思議と心が落ち着く。

学校は家から見えるぐらい近くで、信号が二つほどあるだけの一本道。実に恵まれた環境が出来上がっている。実現するのに、それほど苦労もなかった。

オレの通う学校・嵩田《かさだ》高等学校は、いわゆる農業学校。制服は黒の詰襟《つめえり》だ。


――中学生の時、進路を決めるために各校のパンフレットを見ていると、『野菜や果物・植物の栽培。うどんや味噌の製造』という文字が目に付いた。

特に進学したい高校もなく、大学に進む気もなかったので、進学校はパス。

ならば何か作ったりする専門校だと思っていた矢先だ。昔から母親の手伝いで料理や農作業をすることもあり、それが嫌でもなかった。

パンフレットを見る限り、他の学校には魅力を感じなかったので、嵩田高校に決めた。何より家から学校まで近いのが最高だ。

担任の先生に相談してみると、オレの成績でも十分入れるらしく、おまけに推薦してくれることになった。非常にツイてたと思う。

しかし、そこで運を使い切ってしまったのだろう。

高校に入学してからというもの、これといったコトもなく、むしろ運動関係で優れた弟とやたら比較され、風当たりが強く、正直に言わせてもらうと、凍死寸前。

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