《MUMEI》
くせもの
「ザー、、」
「………」
幸介はシャワーを浴びながら何度も後ろを振り返る。

「……情けない、この年にもなって時々オバケが怖くなるなんて」

ふと風呂場に来る途中で暗がりを見てたら、なんだかちょっとぼやけていて白装束を身に纏い不気味に微笑む女性の姿を想像してしまった。
想像力豊かなせいか、一度イメージを持ってしまうとそれがどんどん悪いイメージに膨らんでいってしまうようで、もう怖くてしかたない。

「怖くて顔も洗えねえよ」
また後ろを振り返る。

「あ、そうだ。最初から後ろ向いてればいいんだ」
そうして幸介は壁を背にして洗剤が目に入らないように丁寧に顔を洗った。

「おー、これは安心できる」
一通り体を洗い終えたので浴槽に浸かる。
「ふ〜、長い戦いだった。浴槽に入ると落ち着くな、、、」
「バタンッ!!」
「ぎゃー!!」
「アニジャ!何をそんなに驚いているのか!?」
「いきなりドア開いたらびっくりするだろうが!!」
「いや、そういえば洗剤を切らしたまま上がってしまったのを思い出した故、届けに参ったしだいなのだが」
「もうちゃんと補充しといたよ!」
「そうであったか、しからば御免!」
去っていった。
「たくもうなんなんだよホント、、もう上がろ」
どきどきの風呂場であった。

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