《MUMEI》
鬼?
ユウゴは男の顔をベシベシと叩いてみた。
しかし、男は目を覚まさない。
今度はもう少し強く殴ってみる。
「……うっ」
「よう。やっとお目覚め?」
にんまり笑ってユウゴは男の顔を覗き込んだ。
「ここはどこだ?」
目だけを動かしながら、男は言った。
「おい、勝手に喋るな。質問は俺がする。何か妙なことしようとしたら、撃っちゃうよ?」
ユウゴは男の額に銃口を突き付けた。
男は強張った表情で頷く。
「まず、お前は何者だ?」
「わ、私は鬼だ」
「馬鹿か、おまえ。参加してる鬼が全員こんなの持ってんのか?あ?」
ユウゴは取り上げた機械を男に見えるように持ち上げた。
「なんだ、これ?」
「…それは、探知器だ」
「知ってるよ。足枷に仕掛けた発信機を追ってるんだろ?どこで手に入れた?」
しかし男は俯いたまま答えない。
「……どこで手に入れたって言ってんだよ?」
低い、静かな声で言いながら、ユウゴは引き金を引く真似をする。
「し、支給されたんだ!」
「誰に?」
「実行委員の実川さんだ」
「実川?」
ユウゴは記憶を探った。
確か、プロジェクトの説明をしていた男がそんな名前だった気がする。
「あいつか。それで?なんでお前たちだけがこれを支給されたんだ?」
「それは……」
「言えよ。撃つぞ」
「私たちは受験者なんだ」
男は早口でそう言った。
「受験者?」
後ろで黙って話を聞いていたユキナが口を開いた。
「てことは、このプロジェクトが試験ってこと?一体何の試験よ?」
ユキナもユウゴの隣にしゃがみ、男を脅すように睨んだ。
サトシは変わらず、後ろでその様子を見つめている。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫