《MUMEI》

強く台風へとしがみ付いたまま、早くと雨月へとせがむ
丁度同じ時分、他の三人もそこへと到着
見える状況に、皆困惑気な顔だ
「……雨月、これは一体どういう状況だ?」
状況理解に苦しみ、眉間に深い皺を寄せる雪舟
「あの馬鹿、凄い事してんな」
その雪舟の肩の上で、笑いを堪えるのに必死の早雲
「あ、歩!危ないよ!」
現状に慌てる事を始めるハル
それぞれの反応をみせながら、皆して台風の周りを取り囲む
「な、何だよ!お前たち!?」
上から見下され、すっかり動揺してしまっている台風
だが必死に虚勢を張ろうとでもしているのか、四人を睨み返し
何とか其処から逃れようと暴れ始める
「・……毎回、毎回、現れる度コレだと敵わんな」
振り払われ、放りだされてしまった桜井の身体をp受け止めてやりながらの雪舟の声
声に明らかな怒気を孕ませ、台風の子を睨みつける
たったそれだけの事だったが、今日うに感じたのか台風の子は途端に大人しくなった
「さて、どんな仕置きがいいか」
「そう、ですね。いっそ、バラしますか?跡形もなくなるまで」
「それもいいな。今後手を煩わされる事もなくなる」
「なら、バラす方向で決定という事で」
互いに顔を見合わせる雪舟と雨月
口元には不敵な笑みを浮かべながら、台風の子へと更に迫る
「覚悟はいいか?小僧」
見下ろす雪舟の表情は酷く凶悪なソレで
一瞥されただけで台風の子は恐怖を覚えたのか、後ずさる事を始めた
「逃がしませんよ」
その身体を背後から抱きすくめたのは雨月
満面の笑みを向けられ、それが更に台風の恐怖を煽ったらしく
顔を引き攣らせてしまう
「……雪舟、雨月。ちょっと、待ってあげて」
「ひまわり?」
見るに見兼ねて止めに入る桜井
何故止めるのかと、表情で問うてくる二人へ
何か、桜井なりに考えがあるのか
浮かべて見せた笑みに、双方が身を引いてくれた
「ありがと」
礼を言ってやり、そして桜井は台風の方へと向いて直る
すっかり恐怖に身を強張らせてしまっている台風へ
その顔を覗き込んでやりながら
「ね。アンタは、一体どうしたわけ?」
真意を、問うてみる
暫く無言だった台風だったが、不意に話す事を始める
「……僕だけ、なんだもん」
「え?」
「僕だけ!少しの間しか居られないんだもん!」
ずるい、と駄々をこね始めてしまい
どうしたものかと、桜井は雪舟たちの方へと問うてやる様に向いて直る
「まさかとは思うが、ひまわり。この小僧、見逃せとかいうつもりじゃなかろうな?」
「言ったら、見逃して上げてくれる?」
上目で見上げてやれば
雪舟は声を詰まらせ、雨月は困った様な苦笑
Yesの返答を戴くまでもうひと押し、と両の手を合わせ更に強請った
「……本当に、あなたは、困った人ですね」
言葉通り、困った風な笑みを浮かべる雨月
そのまま雪舟の方へと雨月が向いて直ると、深い溜息を返してくる
「……だそうだ、台風小僧。優しいひまわりに感謝しろよ」
それは桜井が望んでいたものとほぼ同意の返答二人の配慮に感謝しながら
桜井は改めて台風の方へと向いて直っていた
「な、何だよ!」
「……アンタ、寂しかったんだね」
「なっ……!」
だから、来る度に暴れちゃう。違う?」
「……っ!」
ずっぼじだったのか、台風の顔が俄かに赤くなる
子供の様な見た目にそぐうその仕草に、桜井はフッと肩を揺らしながら
「……取り敢えず、帰ろっか」
皆へと振り返り、穏やかな笑みを浮かべて見せながら言ってやれば
誰からともなく肩を揺らすソレが聞こえ
桜井達は皆連れ立って帰路へと就いたのだった……

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