《MUMEI》

それに随分《ずいぶん》と華奢《きゃしゃ》な身体だ。

「なに? なんなの!? 人の話も聞かないでさっきからジロジロジロジロ見て! そんなに人間が珍しいの!?」

まじまじと見ていたことに気付いたのか、さらに怒気を孕《はら》んだ声を出してくる。

「珍しいのは人間ではなく、アナタの可愛さなんです!」とは言えるはずもなく、思わず土下座をしている始末。

他人が見たら、さぞ驚くことだろう。オレ自身も驚いているのだから。この女は、さながら戦闘機のエンジンだ。うるさすぎる。

「申し訳ありません(このままでは)。許してください(鼓膜が破れてしまう!)」

当事者である彼女は、もっと驚いていた。まさかオレが土下座までするとは思ってなかったのだろう。

「も、もういいから、頭上げて立ちなさいよ」

彼女は自転車を降り、オレの手を取ってグイッと引っ張り上げる。

「なにやってんのよ……で、結局聞いてなかったんでしょ? ワタシの話」

「はい」

オレは、ズボンについた砂利《じゃり》を手でパッパと掃《はら》う。

彼女はため息をつき、

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