《MUMEI》
くせもの2
「御トイレ」
千恵がトイレに行くために起きるとまだ隣の幸介の部屋から明かりが漏れていた。

もくもくもくもく。

もくもくと勉強をする幸介。
「ふむ、集中するときはホントに集中できるな」
夏海から借りたノートを横目に今日の復習。
「いいやつだよなー、夏海」
ふと放課後の照れくさそうな夏海の顔が脳裏を過る。
「って何思い出してんだよ」
そんな幸介を密かに覗き見ているクセモノが一匹。
「アニジャは何を先刻からぶつぶつと呟いているのか」
ドアの隙間から千恵が様子を伺っていた。
「うしっ、今日の分終わりー」
ふと時計を見ると、針はもう夜中の11時を回ろうとしていた。
そして幸介は何者かの気配を感じてドアの前まで一気に距離を詰めた。
千恵は慌ててその場を去ろうとしたが、時既に遅し。
「何してんだ?」
逃げ出そうとして転んだのだろう。うつ伏せの状態の千恵に向かって幸介は冷たく言い放った。
「………」
返事がない。ただのシカバネの様だ。
「明日の朝ごはんは水だけになりそうだな。残念だ」
「アニジャ、それだけはどうか御勘弁を。失礼つかまつり申した」
即座に正座して謝罪の言葉を挙げていた。

どうにも謝られている気がしない(笑)。

「もういいから、今日はもう遅いし寝るぞ」
「承知」
千恵はそそくさと部屋に戻っていった。トイレに行くことも忘れて。

「まったく。退屈しないよホント」
そう言って幸介もフトンに入った。

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