《MUMEI》 「アナタ、名前は?」 「え。近藤《こんどう》だけど」 「フルネームで教えてちょうだい」 「近藤敬太《けいた》」 「アナタ、高校生でしょ? その制服、嵩田《かさだ》高校だよね。学校の場所は……」 そう言うなり、彼女は静かに目を閉じる。 少し考え込むようにし……やがて目を開けた。そして周辺をキョロキョロと見ている。 「あぁ、あそこか」 ……オレは彼女に、ある種の違和感を感じている。それが何かは分からないが。 「あの、オレに何か用かな?」 彼女はまた、ムッとした表情をし、右手にしている腕時計をチラッと見る。 「もちろん用があったけど、今は時間がないわ。もういかないと」 「あっ、学校か!」 オレは思い出したように口にした。彼女も制服を着ている以上、学生なのだ。でも、どこの学生だろうか、見た感じ中学生……には見えないか。 「なんか悪かったな。また機会があれば用件を聞くよ」 彼女は「仕方ないな」という顔をして、 前へ |次へ |
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