《MUMEI》
好きな人 それはアイツだった
 あの日から私は、廉のことを目で追うようになっていた。廉を見てたら、何だか胸がドキドキする。
(何だろう?この感じ…)
「ねえねえ愛美ちゃん!」
「どうしたの?七海ちゃん。」
「今日の調理実習のことだけど、役割分担これでいいかな?」
「どれどれー?」

   はぐ 七海、大誠
   切る 竜生(りゅうせい)、怜奈(れな)
   炒める 廉、愛美

「うーん。いいんじゃない?」
「本当!?よし、じゃあこれで決まりだね!」
(廉と一緒かぁ…何かうれしいな…)

 そして調理実習の時間。
 七海と大誠が野菜の皮をむき、同じ班の怜奈と竜生が切る。そして私と廉が炒める。
「愛美ちゃん、廉君〜。これもお願〜い!」
「あ、はーい!」
「大誠へたくそ!」
「うるせー!慣れてないんだよ!つか、そーゆーお前だってへたじゃん!」
「た、大誠よりはましよ!」
 よく見ると、二人のむいているジャガイモは、元のサイズよりもかなり小さくなっていた。
「お前らうるせーよ。早くやれ。」
「はーい。」

 隣の廉を見ると、慣れた手つきで野菜を炒めていた。
「廉上手だねー。」
「まぁいつもやってるし。」
「自分でご飯作ってるの?」
「あぁ。幼いときに、母さん亡くしてるからな。」
「え…?」
「父さんは働かずに遊び回ってるからな。俺らがしっかりしてねーといけないからな。」
「そう…だったんだ…」
 廉にそんな辛い事があったんだ…全然知らなかった。
「それにしても、お前料理上手いな。」
「え?そんなことないよ?」
「俺なんかよく野菜焦がしたりするんだよ。ほら見てみろよこのベーコン。超黒くなってる。」
「それ、火が強いんじゃないのかな?ほら、強火になってる。これぐらいにしないと…」
「ふーん。すげーなお前」
「いや、火の強さだけは気を付けろって親にうるさく言われたからねー」
「はは、お前ドジッたら、すごいことになりそうだしな。」
「な!!ひどーい!」
「うそうそ。お前しっかりしてるから大丈夫だと思う。」
「え…?」
(そんなしっかりしてるとか言わないでよ!)
「廉君!炒め終わった?」
「おう!盛りつけすっぞ!愛美!」
「あ、う、うん!」

 廉の行動や言葉の一つ一つにどきどきする。
 この時私は確信した。
 廉が好きだってことを。

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