《MUMEI》
にこっ
「はあっ、はあっ!坂きっつ!」

千恵とは途中で別れ、幸介は学校への坂道を登っている。
「理不尽だろ。近いからこの高校にしたけど、はあっ、はっ、夏場のしんどさはっ、想定外だったぜっ」
ぶつぶつ一人でグチたれながら幸介は学校に着いた。
上履きを取り出し、足元に放る。
「バシン、クルクル、ぽてっ」
「うん、今日はいいことがあるかな」

上履きがどっちも上を向いたら今日はラッキー、下を向いたら困難が待ち構えているが、それを乗り越えて幸せをつかもうってことで。
自分で言うのもなんだが、けっこうプラス思考だと思う。

「ガラガラ」
「幸介はよーっす」
昨日の爽やか君こと鈴木修平が爽やかに挨拶をしてきた。
「おはよ〜」
全力の笑顔で返してみる。
「お、おう」

若干ひき気味だな。そんなに気持ち悪かったってか?

「相変わらず行動不振ね幸介」
後ろから夏海が声をかけてきた。
「失礼だな。とても友好的なつもりだったんだが?」
「正味だいぶ気持ち悪かったぞ」
「だって」
「ふむ、笑顔が気持ち悪いって相当ショックな気がするな」
三人で少し笑いあった後、幸介は窓際の席に着いた。
「あいつは、、まだいないか」
ふと教室全体を見渡すと、まだ東條の姿は確認できなかった。
「何ぶつぶつ言ってんだ幸介」
幸介の一個前の席、いかにも体育会系といった風貌の藤田武志が話しかけてきた。
「いや、まあ、なんでもない的な?」
「相変わらず読めねえやつだな。そこが魅力っちゃ魅力ではある」
効果音的なもので「がっはっは」とか聞こえてきそうな感じに笑っていた藤田はなんだかちょっとご機嫌である。
「ガヤガヤ」
朝の教室はいつもどおりのにぎわいをみせている。

「からから」
あいつが教室に入ってきた。

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