《MUMEI》
対峙
「・・・敵。」
倒れたごまの手当てをしていたアイズへと小さく声をかけると、式夜の姿が掻き消える。
ザシュン・・
アイズを一撃で斬り伏せる式夜。
「・・・ヒトは争いを繰り返す・・。」
アイズはごまの上に覆いかぶさるように倒れ、白い僧服が血に汚れ、ごまの体も紅く染めていく。
(・・血・・・・・?)
どくん・・
(・・誰のだ・・)
どっくん・・
(・・白い服・・)
どっくん・・どっくん・・
(アイズ・・)
どっくん・・どっくん・・どっくん・・
(誰が・・誰が・・)
どくん、どくん、どくん、どくん・・
(ダレガ!)
どくんどくんどくんどくどくどくどく・・・
(アノオンナダ!!殺せ、殺せ、殺せ・・コロセ、コロセ、コロセ!)
ブチン・・
「・・・ぃぃぃぃぃ。」
静かに唸り声が響く。
「・・・まだ息があるのか。」
(コロセ、コロセ、コロセ・・)
「アアアアあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
壊れたような叫び声。
バキン・・バキン・・ガシャン
鎧が軋み、ごまの体から剥がれ落ち、兜が落ちる。
「・・・貴様も私の敵なのか。」
ゆっくりと振り返るとごまに向かって刀を構え直す式夜。
獣のような唸り声を上げるごま。

「大丈夫なのかなぁ・・」
教会の聖殿に入ってから何度目か解らぬ呟きを漏らす彩詩。
「ごまも向かったんだ。大丈夫だろ。」
横で佇むバンプが落ち着いた声で言うが、彩詩はまだソワソワと落ち着かない。
街の巡回を終えて、聖殿に入って数分。
途中で、強い魔力を感じた為、式夜とごま以下50名の守護騎士を街の警戒に増員した。
聖殿内には50名の守護騎士と数名の教会の聖職者。
聖殿中央では枢機卿を囲むように聖職者達が、儀式を進行させている。
白い燐光が雪のように舞い、幻想的な光景。守護騎士達の半数以上がその光景に見惚れている。
「ダメだね。やっぱ・・」
前回の結界強化儀式を思い出してしまうのか、彩詩の顔は曇っている。
横に佇むバンプもあまり感動はしていないようで、周囲に気を配っている。
「ごめん、バンプ。」
「・・しょうがないな。適当に言い訳しとくよ。」
バンプの肩をポンっと叩くと、苦笑を浮かべて、静かに聖殿を後にする彩詩。
小さくため息をつくバンプ。
数人の守護騎士が気づいたようで、バンプに苦笑を向けている。
再び周囲の様子を静かに眺めるバンプ。
祭壇では大型の立体型魔法陣が籠められた魔力に輝きを増しその形を白い線で描かれていく。溢れた魔力の断片が白い雪のように緩やかに舞う。合わせるように聞こえる、聖職者達の詠唱。

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